■マンガ・漫画・まんが・あるいはCOMIC



20世紀少年(1〜3巻) 

浦沢直樹:小学館:各\505

 作者はこのシリーズを大切にしているようだ。なかなか連載が進まないもどかしさがあるのだけど、エヴァンゲリオンの救いのない未来像ではなく、本格空想冒険漫画とはこうだ、と反論しているとしか思えない。
 そこにノスタルジーと少し照れくさい「おとな」っていう言葉をあえて正面から捉えているところに潔さがある。まだ未来の姿を描けた時代があったということなのかもしれない。
 21世紀、年明けに向けて新展開になりますます目が離れせない。


由美香

画;井浦秀夫。原作;平野勝之:週刊漫画サンデー連載中

 最近当HP上で盛り上がっている(?)同名ビデオの漫画化。

  作画担当の井浦は、デビュー当時から、泊まり込みの新聞配達の若者や、普通の高校生の等身大のエピソードを、情けなくも優しい視線で作品化するのが得意な人だが、最近V&Rプランニングと組んで、知らない人たちから観れば異様な世界を、やはり優しく可愛らしく描いている。これが意外と相性が良い。衝撃度はビデオより弱いが、ちゃんと漫画作品にもV&Rプランニングの宣伝にもなっている。生暖かくベチャベチャにならないのは井浦秀夫に才能が有るからだ。

  個人的にはビデオの中で、もっとも心配であった平野監督の奥さんのキャラクターを膨らませており、そこでも好感度抜群。丸っこく、省略の多い画風だが、登場人物も本人達に似ていながら、しっかりと消化して自分の漫画のキャラクターとして動かしている。複雑な平野監督の描写になると、まだちょっと類型的なのが欠点では有るが。でもまだ先週号でまだ4回目なので、ようやく最初の峠越えの段階だし、平野監督が宿泊先で必ず製作ノートを作っているエピソードなど、漫画を利用したメイキング作品としても興味深いかもしれない。

  それにしても井浦はどんな漫画雑誌に連載してもトップを張る訳でも無く、淡々と優しく情けない漫画を描き続けていく人だなあ。(森山)
 


裸のふたり

カイトモアキ:ヤング・サンデー増刊「大漫王」連載(終了)

 私はジョージ・A・ロメロ監督の映画、「マーティン」という吸血鬼青春映画が大好きで、その結末の悲劇的な正しさにはいつ観てもただただ頷くばかりなのであるが、これは一種の狼少女物として勝手に分類している。例えば人間が狼や猿に育てられても不完全な野生動物として早死にしてしまうのと同じく、前記マーティンも外観は少年のままで、不老という一種の超能力を持ちながら、家族に疎まれ、社会性を育む事が出来ずに、決定的にいじけて、睡眠薬レイプのような姑息な方法で吸血、殺人を繰り返す生き地獄に陥ってしまう。恐ろしい事に経済的自立すら出来ていない彼は連日罵声を浴びながらも通常人の親戚と同居しているのである。そして最後はその親戚の手で暗殺されてしまう…。やはり、吸血鬼は吸血鬼に育てられないと不幸なのだ。その点漫画の世界では萩尾望都作「ポーの一族」、高橋留美子作「人魚シリーズ」で、主人公達に上手く切り抜けさせていた。共に運命共体の連れが居たから、彼らは何とか決定的退廃に陥らずに済んだ。

 さて、この漫画も同様の話である。主人公は普段、寡黙で大人しいが、切れると人間離れした怪力を発揮してしまう「ばけもの」中学生。唯一の保護者、理解者である母親に死なれ、現在は徹底して孤独。問題は彼が現状からの救世主として新しく選んだ女教師もまた精神的に大きな問題を抱えており、互いの未熟さから、物語が加速して救いの無い状況に陥っていく。ともかくちょっと光明が見えると、それが完膚なまでに叩き潰される、の繰り返しで、こんなに登場人物を追い込む漫画も珍しい。ほぼ毎号、「ばけもの」に変身し荒れ狂った主人公が、元に戻った後、怯え、逃げ惑う先生を謝りながら追いかけるという救いの無い展開であった。それがテンションの高い絵で描かれている。

 私は前記映画のように救いが無いがそれゆえに泣ける最終回を期待していた。そうでないと、萩尾、高橋両巨匠に負けてしまう。それは読んでのお楽しみ。まだ本屋さんに置いてあるはず。小学館の事だから、まず単行本にはなると思うが。

 それにしてもヤング・サンデー系は歪んだ漫画が多くて素敵であるなあ。(森山)
 


マンガの時代展

東京都現代美術館

 えー、12/13(日)で終わってしまう展覧会のことを書くのが良いのか分からないけど、この展覧会、概論としては成功しているのではないだろうか。“手塚治虫から、エヴァンゲリオンまで”という括りも分かりやすくまとめられていたと思う。

  まあ、宝島社で出しているムック本を総括した程度の内容で、一応名場面は外さない展示内容。惜しいのは、生原稿が少なかったこと、大友克洋と岡崎京子の展示がなかったこと、永井豪も少なかった様な気がした。パンフレットが2000円でコンパクトにまとめてあるのと、フィギアなどのショップ販売が充実していたのがマルだ。(角田)
 


愛のせいかしら

内田春菊:文春文庫

 小説「ファザーファッカー」や「目を閉じて抱いて」の大ベストセラーも記憶に新しい内田春菊の相変わらず女性上位(体位だけではない。精神的にもだ。)のセックスシーン満載の短編集。青林堂で最後に出した作品(93年刊行)の文庫化。

  一般のレディースコミックは、登場する男たちがあまりに抽象的(というかキャラクターが立ってないというか)でリアリティを欠き、またストーリーもSMかレイプもので、だんだん性の快楽に溺れていくというパターンばかり目につくことがつまらないのだが、このヒトの漫画はかなりリアルで生臭く、女の視点で描いているので男にはあまりにストレートで時には痛かったりする。もちろん女性の性のファンタジーを描いてはいるのだけど、実際にありそうな話だし、登場する男たちが情けなかったり、コドモだったりするところもリアルだ。それにしてもこのヒトのマンガの女性たちは、みんなオイシそうにフェラチオし、自由でたくましく、明るいセックスライフをエンジョイしている。

  この短編集は女性の性幻想を理解するには最良のテキストかも知れない。今回の短編集の中でのオススメは、最初性関係において男性上位で展開していくのだが、二転三転、最後には年上の女性にペニスバンドでアナルの処女を奪われて情けない声を上げることになる…という「彼のくれた毒」。(船越)
 


蠢動(しゅんどう)

園山二美:アスペクト

 処女短編集。自分を追い込む芸風の寡作な女流漫画家。実際はこの短編集の主人公達のように自意識が強すぎる人にこんな立派な漫画は書けないと思う。「作者自身は自意識を徹底的に分析した苦しい経験から学んだバランス感覚を現在は確かに身につけている。」「この人はねこじるや山田花子のように簡単にあっちの世界には行かないだろう。」などと自分を一生懸命納得させながら読んだ。そうでもしないと作者が心配で心配で漫画に集中する事が出来ない程の臨場感がある。描かれている自殺未遂も登校拒否もフィクションであるなら、新井英樹が言う「女狐」どころか芸達者な怪物ある。

 内田春菊や高野文子並の器。

 この漫画は魔女の一瞥だ。(森山)
 


Alice Brand(アリスブランド)

町田ひらく:コアマガジン

 エロ漫画の基本は「読んだらヌける」ことだと思うのだが、このストーリーも絵も上手な漫画家の最新単行本を見てヌけるヒトがどれぐらいいるのだろう。収録は全13話の短編集で今回は外国を舞台にしているが、相変わらずオメメぱっちりの美少女たちは犯されつづけているし、男たちは犯しまくっている。美少女たちは相変わらずクールで犯されることにさしたる抵抗はなく、まるで報酬を求めない娼婦のようだ。

  「聖なる娼婦」というイメージがあるが、あらゆる男たちのペニスを無条件に受け入れる町田ひらくの描く少女たちは、まさにこのイメージ通りである。女の本質の二大原理が娼婦性と母性であるとするならば、この作家にはいずれ母性を描く必然があるのかも知れない。いずれにしても単なるエロ漫画というジャンルを超えるすばらしい作家だとは思うが、個人的には大塚英志の「物語消費論」の原型になったともいわれる初期藤原カムイの「H2O」路線を読んでみたいような気がする。(船越)
 


エンゼルアタック

  伊藤伸平:ヤングアニマル連載(白泉社.終了)

これは拾い物。白っぽいアニメ系の頬骨の高い主人公達の顔は私の好みではないのだが、それにも増して諧謔に満ちた身もふたも無い話が素晴らしい作品。

  連作短編の読み易い形式。おそらく年内に2巻目が出版されて完結するであろう手頃な長さ。各キャラクターが見事に立っている。特に見せ掛けの誠意でしか他人と接し得ない、心の中の闇には本人も無自覚で(明らかに危険な密命を帯びている)はっきり言って馬鹿で性格の悪いヒロイン「ユ リエル」が実に良く、これは作者も会心だったらしく、単行本1巻のあとがきで誕生の経緯を述べている。ここまで愚かで狡猾な人物像は漫画界ではまれである。

  おなじく主役の刑事早田が自分の利益の為には他人をどんな目に合わしてもまったく反省心をもたずに居られるサイコパス(でも結構色男)として描かれている。女の尻を見詰める彼の内部からは危険なモーター音が聴こえるようだ。

 後どんなにひどい目に会い、入退院を繰り返しても、必ず職場(警察)に戻ってくる早田の後輩「東刑事」にはハリー・キャラハンでさえも最後は首を捻ってしまうだろう。命有っての物種なのにね。

   過去の映画、アニメ、漫画、小説、ゲームを作者のひねくれた視点で処理し、主人公の堕天使の破壊的行動一点に結びつけている作話力も外れなし。

  ともかく笑いながら読んでいくうちに、ユリエルの抱く秘密の怖さが強まり、いつしかゾっとしてくる終わりの始まりを描いた見事な漫画。最後のエピソードを読み、なるほどと思える人は結して全員では無いにしてもだ。 初期高橋留美子から唐沢兄弟が好きな人には絶対お勧め。(森山)
 


電脳なをさん2

  唐沢なをき:アスキー:¥1,400

 掟破りの電脳バカ漫画。これを連載している『週刊アスキー』は何を考えているのだか未だによくわからん。今までの隔週が週刊になっただけにネタは辛いが、もうどうでもいいやいという開き直りが今の電脳社会を象徴している(?)ようで清々しい印象を受けるのは考えすぎだねえ。

  一部のほんの一部の人にしか通じないギャグをどこまでやるんだ作者はと、読者を不安のどん底に落とし入れる恐ろしい本。他誌の連載に比べてほとんど治外法権のようなギャグのオンパレード。パロディー何だか本気何だか何を考えているのやら。ついには掲載拒否モノまで書いてしまったといういわくつき。果たしてどこまで行くのやら、これはリアルタイムで読めるモノだけがもつ幸せな電脳バカ記録でもある。(角田)
 


「拳闘暗黒伝−セスタスー」技来静也 :ヤングアニマル連載(白泉社.現在は休載中)

  舞台は皇帝ネロ治めるローマ帝国。華奢で泣き虫だが、天才少年拳闘士である主人公、セスタスが過酷な試合(敗北=死)と日常(焼き印を押された拳奴として鎖に繋がれている)を通し成長していく過程を描く血と愛の物語。

   作者は「ベルセルク」でブレーク中の三浦健太郎のアシスタントを経て処女長編「ブラスナックル(逃亡奴隷の黒人と獣人の戦い)」をアニマルに連載。大河ドラマ「ベルセルク」が人間活劇を展開中は前記作品で人外の戦いを描き、「ベルセルク」が人と怪物の対決を描いている現在は人間ドラマに挑戦している。このローテンションは成功していると思う。

  硬さが残るが丁寧な絵。主要登場人物を長い睫の美形に描いており、ある種の読者におもねるような色気が漂う。この絵に拒否反応を示す友人も居るが私は余り大きな声では言えないけれど好きである。

   ストーリーはセスタスと、そのライバルで総合格闘技パンクラチオンの天才児ルスカの競争を軸に、同年代の少年皇帝ネロ(精神的不安定さと擁する権力ゆえに極めて危険な存在)を絡ませ展開していく。他の脇役も、例えば権謀術数に長け、息子ネロを完全に支配、去勢している皇太后アグリッピーナや、セスタスとルスカの師匠(足を引き摺るかつての名拳闘士ヌミディアのザファルと、ルスカの父親でアグリッピーナの護衛隊長兼愛人であるアッティカのデミトリアス)など魅力があり、これからが楽しみである。

   格闘技漫画としては打撃系と組技系の争い物で、最近あまり格闘漫画上では旗色がよくない拳闘(ボクシング)をあえて主人公に選ばせたのはそのほうが必然危機を招くので、作話上山場を描きやすいからであろうか。

 いずれにしても話はまだ序盤であり、出版社も作者にしっかり書き溜めをさせてから、掲載している様子。あまり設定を膨らませすぎないで頑張ってほしい物である。(森山)
 


『BAN!!!2 』

(鈴木ダイ)秋田書店:月刊少年チャンピオン連載(終了)。

  この度、惜しくも完結。「満16歳以上は銃器の所持を認める」という近未来の高校生活を描いている。警察は無力化し、無頼の徒と賞金稼ぎが横行する世界。そう、かの永井豪が20年以上前(いや、27年以上前かな?)『学園退屈男』で描き、その後『無頼・ザ・キッド』でリメイクしているシチュエーション。しかし巨悪や政治に挑むような話のインフレには陥らずに、一つの高校内闘争や広くても一学区内の出来事で収めている。制服を貴重に上手く崩した高校生ガンマンのファッションや銃器へのこだわりは、程良く親しみが持てる。

  登場人物も普段はお人好しで少々抜けたところがある主人公がある一言で必ずキレ、驚異の早撃ちを見せれば、脇役には全身防弾の巨漢やら、美人で如才ない武器屋、隠し銃の秀才ガンマン、サディストの賞金稼ぎ三兄弟、はたまた対銃器用格闘術「空道」の使い手等基本を押さえた面々を並べています。

  なぜか裸眼よりゴーグルやメガネの描き方の方が上手い。アシスタント時代、いつも眼は師匠が書いていたのかな?エピソードも絵もまだまだ発展途上の様だが順調に育って望月三起也の領域まで近づいて欲しいものです。車や女の子をもっと練習してね。と希望していたら次の作品は剣豪物だった。またガンマン物に挑戦して欲しいのだが。

  一昔前は当たり前だったこの手の漫画の少年誌連載が減ったのは、出版社の自己規制だろうが、秋田書店は寛容なようだ。なぜかヤングチャンピオンが一番おとなしいけど。

  ヤングチャンピオンと言えば、野球の名を借りた格闘技マンガ『球鬼Z』(藤澤勇希)が飛ばしていて、このまま行ったら宇宙人と対決する勢い。どうか凡庸な過剰さに陥らないで欲しい。今はとても面白いのだが…。

  野球マンガと言えば、ビッグ・コミックスピリッツ連載の『ダイアモンド』(青山広美)で、主人公(粗削りだが大変なスラッガー)とバッティング投手から這いあがる為にナックル・ボールを修得した中年投手の対決が描かれていて、ナックルボールマニアの私としては見逃せない。そろそろ決着を見る頃だ。なにしろ柳沢みきおの作品でもナックルボーラーを主役に据えた『男の自画像』だけは好きなくらいだから(他の作品もついつい怒ったり、照れたりしながら読んでしまうが)。

  展開がもどかしいマンガと言えば、ヤングサンデー『殺し屋-1-(イチ)』である。単行本二巻を費やしてなお最初のエピソードが終わらない。これは新連載の作品としては極めて異例で、ちょっと引き延ばし過ぎである。登場人物全員が精神異常者、犯罪者、あるいはいじめられっ子というシチュエーションの陰惨さと展開の緊張感にそろそろ耐えられなくなってきている。まるで大東徹源の居ない『カラテ地獄変』のようである。早く最初のカタルシスを下さい。このままでは割れてしまいそうだ。しかし、この作者は高い知能を持ちながらも人間として大事な何かが欠けている女の子を描くのに長けている(キャバクラ嬢で安生組のカウンセラー兼アドバイザーのカレンちゃん)。

  現在の主役はタイトルロールの-1-(イチ)ではなく、安生組若頭、ピアスのマーボーこと垣原になっている。いままでのマンガに出てこなかった特異な顔。チェシャ猫のような口の裂けた笑み、拷問はするもされるも大好きというのはかなり素晴らしい。

  終わってしまって残念なマンガと言えば、大分古くなるが、週刊漫画アクション『明楽と孫蔵』(森田信吾)、ヤングアニマル『エンゼルアタック』(伊藤伸平)である。きりがないので後日改めて触れます。(森山)
 


漫画について

 最近ふと思い出したのが、私は読み書きを覚えるよりも漫画の約束事をマスターするのが早かった。字が読めない3、4歳児の時から見た漫画のことは覚えている。インクが表現する記号の役割や、コマ割りは理解していたようだ。小学校高学年まで自分の名前が漢字で書けなかった事を思えば驚異的である。

  以後30余年間、漫画を読み続けている。中断や量の減少はあっても続いている。アルコール依存が進むと安酒や薬用アルコールに手を出すように、資金力のない子供時代は姉が少女漫画を買ってくれば読むし、落ちてたエロ本の四コマ漫画も読むし、聖教新聞や週刊民社も漫画だけは読んでいた。(ちなみにこの二紙に対する私の評価は低い。理由は漫画が面白くなかったからである。同様に週刊朝日は「山藤章二のブラックアングル」の連載があるというだけで、週刊読売やサンデー毎日より、私内のランク付けでは格上であった)意識的に断とうとした時期もあったが、買うのをやめても駅に行けばごみ箱からでも拾って読んでしまうし、廃品回収があればヒモを千切って持って帰ってしまう始末。資金力がついた成人後になると、正月やお盆休みに定期購読紙の刊行が不規則になると普段読まない漫画雑誌をつい買ってしまう。まったくもって病みつきである。

  毎日飯を食っていても料理が上手くなるわけでもないが、味が変われば解るので、まあ、そんな事を少し書いてみたいと思う。(森山)
 


●ソムリエ

   城アラキ/甲斐谷忍:集英社「オールマン」連載中

 下記の「サイコ」とか読んでいるヒトからはまったく相手にされないであろう愛と希望と感動のワイン漫画(書いていて少し恥ずかしい)。だいたいこの手の作品は、作者の意図か編集の意図か、はたまた読者の要求か判らないが、「美味しんぼ」などを引き合いに出すまでもなく啓蒙的になりすぎる嫌いがある。まあ、やや逆説的だけど下記の「サイコ」も啓蒙的なんだけどね。一見そうは見えないところが大塚英志のしたたかなマーケティング力。

  さて、「ソムリエ」である。啓蒙ありきたり感動グルメ漫画として読むとなかなか満足は得られないかもしれませんが、「日本で一番読まれているワインの入門書」として読めばかなりの満足が得られるハズ。ついついワインショップに足を運びたくなるでしょう。単行本が累計100万部というからたいしたものです。テレビドラマも10月から稲垣吾郎主演で始まるそうです。

  なお、この「オールマン」という雑誌「ソムリエ」以外にも江川達也の「DEADMAN」や唐沢なをきの「けだものカンパニー」ほか六田登、北条司、末松正博、ジョージ秋山、御厨さと美…等、執筆陣がなかなか豪華です。さすが集英社。(船越)
 


●多重人格探偵サイコ

   田島昭宇/大塚英志:角川書店:\580

 だいたい10年くらい前、ふと立ち寄った書店で気になった書名『物語消費論』、著者は知らない人だった。しかし読んでいるウチにぐいぐいと引きつけられこの著者のファンになってしまった。そして89年M君事件。彼は弁護のために法廷に立った。彼は著書でこう述べる「ボクは矮小なものを切り捨てられない」。それはオウム事件の頃だった。そして、「屍体を徹底的に描くことで死を遠ざけない」と宣言して始まったこの連載は、途中で酒鬼薔薇事件と遭遇する。起こる猟期殺人事件の異様さと屍体の数は半端じゃない。大塚英志は、常に時代の負の尖兵となっている。好むと好まざると・・・。その作品を読めるボクらは幸いである。

  田島の独特のハイ・キーで極端に描いた東京の姿も特筆に値するんじゃないか。こんなリアルでありながら、アンリアルな風景は観たことがない。(角田)
 


●ハンター×ハンター

   富樫義博:集英社:\410

 いまさら、『少年ジャンプ』連載を取り上げることないだろうと思うけど、私こういうの好きなんです。少年の冒険もの。ある種の王道を行っていると言っても良いでしょう。ゲーム時代の話なんだけど、でも妙に懐かしさのあるストーリーテリング、画の巧さに一気に読んでしまいます。前作のハチャメチャSF『レベルE』も大傑作でしたが、今回も結構期待させられます。(角田)
 


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