チェイシング・エイミー
ケヴィン・スミス
小さな兵隊
ジャン=リュック・ゴダール
血みどろの入り江
マリオ・ヴァーヴァ
チャーリーズ・エンジェルズ
McG
血槍富士
内田吐夢
血を吸うカメラ
マイケル・パウエル
ちんころ海女っこ
前田陽一


●小さな兵隊
 LE PETIT SOLDAT 60 ジャン=リュック・ゴダール  (渋谷シネセゾン)

 やっと、観られた。もしかしたら一生観られなかったかもしれないと思っていたから嬉しいはずだが、気分は昂揚しなかった。なぜか?演出が下手だからである。 『勝手にしやがれ』(59)も観ていられるのは、編集のリズムと、ジャン=ポール・ベルモンドの存在だと思うが如何であろうか。本当に映画として演出力が開花するのは『女と男のいる舗道』(62)からだ。
  そう思えるのは15年程前に、この映画のシナリオ翻訳を手に入れて読んだ印象よりも、映画自体がインパクトが無かったからだ。映像が勝ってなかった。シナリオでは、対立するスパイの哀しさが文学的な香りを持って描かれていたが、これじゃあ出来の悪い観念的な作品過ぎる。時代性もあるが、観念の部分じゃ納得できるものではなかった。シナリオに酔っている感じもあって、画作りに力があまり入っていないと感じた。でも長回しのところなんか昔だったらすごく感心しちゃっているんだろうな。ゴダールが肉体的ではなく、アタマで作りすぎた映画と思う。
 (角田)


●チェイシング・エイミー
 Chasing Amy ケヴィン・スミス(シネアミューズ・ウエスト)

 騙されたと思って、見てといってももうすぐ公開終了しちゃうんだよね。すごく地味な映画です。でも笑えます。まともな人間は出てきません。ニューヨークと近郊の小都市に住む、黒人のホモ、バイセクシャルの女、そんな女に恋する漫画家とその相棒。 狭い世界のなかで、人が真剣に考え悩み、そのシュチエーションが笑いを呼ぶという、ボクはビリー・ワイルダーのシュチエーションコメディーを思い出しました。それも、すごく残酷な部分、人を斜に見る人間騒ぎの莫迦さ加減を。
  でも、この映画はそれでも莫迦なんだから仕方ないじゃんと言わんばかりに笑わせてくれます。脚本がものすごく上手いんです。拾いものと言う感じで、見ると、一晩くらいは(レイトショーなんで)ニタニタしてられます。ウディー・アレンのように深刻にならず、かといって、ジム・ジャームッシュのようにすかしていなく、ジョン・カサベテスのように温かく、登場人物に感情を吹き込んでいる。
  そのうちに少女漫画家がパクるんじゃないかと思われるほど、設定、キャラクター共に良くできたお話しです。是非ご覧あれ。
 (角田)


●血みどろの入り江
  A BAY OF BLOOD 71 マリオ・ヴァーヴァ(ビデオ)

 ホラー、恐怖、スプラッターの巨匠、マリオ・ヴァーヴァーの陰鬱な、映画館で観たら結構ビクビクものだろうと思われた佳作というか、独自の美学満載の映画。撮影も監督自体がして鬱蒼とした寂れた湖畔のリゾート地の夕暮れの描写と、そこに住む人間の変態さ、リゾートにするために起こる惨劇。殺人の動機がいまいち良く分からないのだが、殺人描写、恐怖描写は逸品です。
 さすが、ダリオ・アルジェントの師匠、格が違います。音楽のセンスも良くサントラがあったらいいななどと考えてしまいました(美しい音楽が延々と流れる)、画の残酷さとの対比がたまらん。
 あと、『ヴァンパイアの惑星』を観たいんだけどどこかにないかなあ。
 (角田)


●チャーリーズ・エンジェルズ
CHARLIE'S ANGELS 00 McG(熊谷マイカル)

 ハリウッドスターが「性的代用商品」であることは自明なことだが、ここまであからさまに自らをきっぱりと売り物にする潔さは素晴らしい。それが、映画というエンターテインメントの原点だということを改めて分からせてくれる。そこまでツボを押さえた作品がつまらない訳がない。観る快楽を与えてくれる。ほとんど脳内麻薬状態で、映画を観ている!と感じさせてくれた。初期の007や、ジャッキー・チェンの作品のように楽しませるためには、なんでもやる。カンフーも、お色気も、爆発も。絶対に続編を作るべきだ。監督も見せ方を分かっている。意味のない映像の遊びが、ニヤリ、ワクワクさせてくれたり、音楽のセンスも抜群だ。ANGELつながりの曲のオンパレード。
 しかしキャメロン・ディアスは一体なんの達人だったんだろう?
 (角田)


●血槍富士
 55 内田吐夢(ビデオ)

 満州から復帰してきた内田吐夢が、戦後第一作。製作が満映の残党、マキノ光男。企画協力に小津安次郎、伊藤大輔という豪華メンバーが名を連ね、日本映画の黄金期を彷彿させます。それほどの期待を受けた映画ですが、どうだったというと何とも不思議なテイス
トに仕上がっています。
 作品は、戦前のリメイクで、市川歌右衛門扮する、気のいい主人思いの槍持ちが、上京する主人と道連れになる、様々な人たちとのエピソードを連ねていくというグランド・ホテル形式の変形です。(ロードムービーなんてモンじゃないよ)
 普段は優しいが酒が入ると性格が変わる主人と、下郎のちょっとおっちょこちょいの加東大介、歌右衛門を慕う、天涯孤独の少年。旅芸人の母娘、借金のかたに娘を売ろうとする父親の悲しい旅、街道を荒らす大泥棒、いかにも怪しい風体の男とそれを追う謎の男、
彼らが同じ東海道を富士を観ながら旅をして、道中でのエピソードや、雨の日の宿屋のエピソードなどがテンポ良く絡まり定型ながら飽きさせない。内田吐夢は多くの人物を描き分け、肝心なところでアップと、ロングショットを劇的に使う。
 最後に侍であることの虚しさを訴えた主人が酒の席の喧嘩で殺され、それでも主人に仕える歌右衛門の姿を、泥まみれになりながらの大立ち回りで、延々と描く(こういう当たり前の工夫をする映画が少ない)。見事仇を討って、皆から褒められる歌右衛門は、慕っ
てくる少年が侍になるというのに「馬鹿野郎、侍なんかになるんじゃない」とはき捨てるように言う。こういう主従関係、封建社会に疑問符を打つのは、戦前の反社会映画の名残なのか。それとも戦後の内田吐夢のニヒリズムだったのか。力作だど、同時代の人間は違
和感を感じなかったのか。内田吐夢が巨匠となっていくのは、これから10年の間だ。
 (角田)


●血を吸うカメラ
 60 Peeping Tom マイケル・パウエル (シネ・ラセット)

 こんな孤独で恐い映画が隠されていたなんて……。あまりにも常軌を逸していてお薦めするのにも躊躇する。でも出来は素晴らしい。
  ねっとりとしたテクニカラーで描かれたカラーと闇の融合。陰鬱な人間の裏側を描き、自分自身の異常性に苦悩する主人公。カメラを覗くことによってしか性的興奮をしない男。その原因は……。
  殺人者の日常と苦悩を描くなんてそれ自体狂った設定なのに主人公は何の救いもなく突き放される。人間のダークサイドが自分の真の姿として生きている男の苦しみなんて誰にも分かるはずないけど、それが感じられるようにどんよりとしたロンドンの天気の下で起こる事件が淡々と描かれる。最近の訳の分からない殺人鬼ものとは区別して欲しい。 狂気が膨れ上がりラストに爆発していく有り様は鳥肌が立つほど恐い。
(角田)


●直撃!地獄拳
 74 石井輝男(ヴィデオ)

 千葉真一のやる気のない忍者の末裔の設定がいい。仲間の郷英次は鍵開けの名人なのだがただの助平。佐藤充の元警官の殺し屋も無意味にニヒル。マンガ的なキャラクターを鈴木則文のようにくさくなるまで描くのではない、あっさり加減が石井輝男の魅力だ。この人には山田風太郎ものを撮ってほしいなあ。
(角田)


●ちんころ海女っこ
 65 前田陽一(中野武蔵野ホール)

 原案、富永(マンガ教室?)一朗のポンチ画に始まる、本編は高度成長の余波が地方に波及してくる時代に忘れられた小島を襲った、ドタバタ喜劇。為朝島(どう考えても大島なんだけど)も観光化しようとする村長を始めとする一派がいて、昔からの海女をお色気路線として売りだそうとする。が、そんなものを笑い飛ばす海女達のパワーの描写があるが、でも金になると分かった途端に若い海女達は観光化の手伝いをする。その現金さ加減。欲望一直線の正直さ。
 一方、自宅に温泉を掘ろうとするが全然出てこない左朴全が怒って庭の木を引き抜くと、なんとそこから温泉が沸き上がり、一気に観光化に拍車がかかるはちゃめちゃさ。一応主役の中村晃子は、海女の格好でカマトトぶって可愛いのだが、演技が出来ないのが見え見えで台詞も少ない。
 島の風習と都会化のせめぎ合いがあったりするのだが、夜這いでドタバタとかいうギャグでみんな裏の裏をかきあってぐちゃぐちゃな関係になって話は進んでいく。しかし、わずか90分もない映画の中でこれでもかというくらい内容が詰め込まれラストへとなだれ込む。
 なんで30年前に作られたプログラムピクチャーが充実しているのお?としきりに思った次第。『Shall we ダンス』とかに偽善、あるいは物足りなさを感じる人には是非観てもらいたい。ちなみに場内は満席だった。
 (角田)




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