ラヴ&ポップ
庵野秀明
ラジュー出世する A.ミルザー
ラスベガスをやっつけろ
テリー・ギリアム
ラッシュアワー2
ブレット・ラトナー


●ラヴ&ポップ
 98 庵野秀明(ビデオ)

 誰か見た人いる?エヴァは見たけどこれは見ていないと言うまるでアニメファンみたいなこと言っている人が多いんじゃないだろうか。あの騒ぎは何だったのかというのはここで述べることじゃないからいいとして、半ば期待と、駄目だろうと言う期待がごちゃ混ぜのままに映画は始まりました。 デジタルビデオカメラで全編撮影した画面。画質はビデオになっていたけど、劇場の時にはF効果を使ったのかな。スタンダードでくねくねと動くカメラは面白いけどそれだけだね。
 映画は海に浮かぶ女子高生の水死体を海底から見ている夢から始まる。「おお、サンセット大通りじゃん」とつかの間思った後には、執拗な笑っちゃう程の主観カメラと、超ローアングルの盗撮カメラのオンパレード。お話し的には脚本が村上龍の原作をほぼそのまま脚色しているので、まあ破綻はない。原作読んでない人には結構話が面白く感じるんじゃないのかな。ただ退屈な日常性を象徴するのにレールに乗って走っている模型列車にカメラを載せて走らせるシーンは頂けない。これってこのレールから外れないという象徴でしょ、安易すぎない。そういう幻想シーンがいっぱい出てきて悩むのかと思ったけど(笑)、本線のストーリーに戻ったから良かった。
 演出には、何にもこだわらないことにこだわったんじゃないかと思えるところがたくさんあった。アニメじゃないから制御できんもんね。これはある意味での自主映画、プライベート・ビデオだよ。監督の好みというか、好き嫌いで出来ているんだもの
 好きな物………だせえ選曲のクラッシック(まるで中学の音楽の教科書から引っ張ってきたような名曲ばかりだ)、ファーストフード、汚い工事中の街、女の足、広角レンズ(実相寺昭雄だ)。
 嫌いな物………女子高生、雑踏、明るいところ、生活感、食べ物(みんなまずそうに食べる)、そして映画。

 映画が撮りたくもないのに撮れるんだよ俺は、と言って作った感じが感じるのね。最後に編集と音楽でどうにかなるわい、どこまでも脱力しているんだよな。ここが何がどうしても撮りたかったと思わせるものが何もないんだよなあ。いろんな煩わしい事柄から逃げまくっているのが見え隠れする。それを正直に見せてしまうだけ愛すべき自主映画、学園祭用クラスで一夏かけて作りましたビデオのようには出来ている。
 どこまで行っても「こんなものですよ」とニヤニヤ笑いで逃げられる映画(ビデオ)なんだよね。批評封じと言っても良いな。誰も真面目に取り上げようとすればするほど脱力させられる、要するに監督の手の中でしか遊ぶことを許されていない、村上龍の小説の映画化としては初めて成功した(自分で監督していないから)文芸映画作品というのが、妥当な結論じゃないかな。庵野に何を期待するんだ?所詮は感覚と記憶のコラージュの高校生映画研究会だからね、新しいことは何もない。
 (角田)


●ラジュー出世する
  NANA PATEKAR AS "JAI"  A.ミルザー(ビデオ)

 現代映画の最終兵器、インドミュージカル恋愛サスペンスアクション何だかジャンル不明映画。見ているうちにどの分野にはいるかと言うより、後何が抜けているのかなあと思うくらいてんこ盛りな内容。  ストーリーは田舎から希望に燃えて出てきた青年ラジューが、ボンベイで働いて出世していく間に恋愛あり踊り(意味もなく!)ありで、クレージーキャッツの無責任シリーズというか、東宝サラリーマン物を一瞬連想したけど、ところがどっこい話はそんなところで終わらず、銀河系の彼方まで吹っ飛んでいく、超豪華(と言ってもインド基準でだよ)夢の大作って感じで進む。映画原理主義者としては映画には全てを注ぎこまなきゃ行けないと思っているから、雨のボンベイのラストシーンなど分かってても泣けてしまうのよ。映画はここまでやらないとねやっぱりという娯楽作品です。でもビデオで観るのは寂しいね。 劇場にかかったら是非見に行こう。
(角田)


●ラスベガスをやっつけろ 
  Fear and Loathing in Las Vegas 98 テリー・ギリアム  (ビデオ)

 ビデオを観終わって、劇場に行かなかったことを非常に後悔している。それほど素晴らしい撮影。彫刻のようにデコラティブな分厚い作品だった。原作の挿画をそのまんま、韜晦なしに映像化するというアホな発想。それを映像化した、片目のイタリア人カメラマン(ヴィットリオ・ストラーロのスティディーカム・オペレータをしていてこれがデビュー作)は ビザールな世界を色彩と構図とカメラワークの洪水で見事に構成した。
 面白いのは、これが書かれた時代にはギリアムはアメリカにはいなくて、イギリスでモンティ・パイソンやってたんだから、いわば“アメリカ人だけど知らない現代アメリカ”を描いたところだね。インタビューでも言っているけど、「現代のダンテの地獄編だ」と
いうのはホントだ。非常に様式化された中世劇のように、現代アメリカの喧噪(ラスベガス!)を切り取っている。『フィッシャー・キング』以来、アメリカを描こうとして七転八倒していた彼が、ようやく辿り着いた“ギリアム第一章の最終幕”だと言える。
 (角田)


●ラッシュアワー2
   RUSH HOUR2 01 ブレット・ラトナー (新宿ピカデリー )

 今回はジャッキーがアクション監督しているということで、アクションとコメディーが心地良い。クリス・タッカーの無意味 な早口も安心して見ていられる。太ったジョン・ローンはかつての色気はないけれど、悪役としていい味を出している。ハ リウッドでのジャッキーのあり方としては最高の香港ライクな出来ではないだろうか。
(角田)