ムトゥー、踊るマハラジャ
 K・S・ラヴィクマール


●ムトゥー、踊るマハラジャ
 MUTHU K・S・ラヴィクマール (シネマライズ渋谷)

 この映画はテクノミュージカル映画として記憶に残る作品だろう。楽しい映画については、別項で『タイタニック』と比較して書きたいと思うので、この映画を観ながら思った事を書くと、戦後間もなくの東映時代劇ってこんな感じだったような気がする。日本人はせせこましいので、1本で3時間よりは、3本立て4時間とかを好んだと思われる。勿論スーパースターは居たし、踊りも歌もあった、恋の駆け引き、チャンバラもあった。
 ここでポイントなのは、スーパースターがお茶目であるところだ。なんでもできるけど、失敗しても憎めないみんなの人気者。という方程式が成り立つところで映画も成立している。観客を味方に付けてしまえば後は恐いもの無し、突然どんなシーンが現れようと誰も気にしない、喜ぶだけだ。日本でそれが成立しないのは、スーパースターがいないのは勿論、3時間も映画を観る機会が少ないこと、映画のリズムに身を任せることが無くなったんじゃないだろうか。誰も映画は好きだけど、そこまでは熱中しないやということだ。
 しかし、没入という言葉が死語となっているとき『ムトゥー、踊るマハラジャ』を観ること、または映画に対する疑いを持ったとき、喝を入れてくれる格好の刺激剤となる。観るべきだよ。
 今思いついたのだが、東映時代劇、東宝サラリーマンものでもいいや、『ザッツ・エンターテイメント』的に作ったらすごく楽しいものが出来そうだ。ビデオで作ろうかしらん。上映時間は3時間ね。
 (角田)