ビッグ・リボウスキー
イーサン・コーエン
ピッチ・ブラック
デヴィッド・トゥーヒー
ピース・メーカー
ミミ・レダー
ヒート
マイケル・マン
ヒートアフターダーク
北村龍一
漂流街
三池崇史


●ビッグ・リボウスキー
 98イーサン・コーエン(シネマライズ渋谷)

 スイマセン。半分以上寝てしまいました。評価不能デス。
  (角田)


●ピッチ・ブラック
 PITCH BLACK 00 デヴィッド・トゥーヒー (ヴィデオ)

 様々な人々を乗せた宇宙船が故障して降り立った惑星には未知の殺人生命体がいる。やつらは暗闇でしか動けな い。たまたまその日は月蝕のはじまりだった。脱出まではあと数時間。乗客のリーダー格は、知恵はあるが信用できな い極悪非道の囚人だ。
 とまあハナシを聴くだけだとワクワクするのだけど、なにしろ演出が全くのヘタレであるので一向に盛り上がらない。 どうしたらこんなにつまらなくできるのだろうか。SFというなんでもありのキャンバスを与えられたのに全然スケール感が ない。安っぽいことを逆手に取れば『アンドロメダ…』や いくつかのTVSFシリーズを応用すればいろんなことが できると思うのだけど。半端に豪華なVFXやモンスターだけが目立つ。これくらいだったら日本からアニメの監督を引き 抜いた方がナンボおもしろいものができるやら。そういう考え方はないのだろうか。
(角田)

●ピース・メーカー
 Peace Maker ミミ・レダー(ビデオ)

 ドリーム・ワークス第一弾と言う割には監督にTV出身を使うとか、バカにしていて劇場に足を運ばなかったけど、これが滅茶苦茶面白い現代の冒険活劇に仕上がっていた 。 失われたウクライナの核弾頭がテロリストの手に渡るのをCIAと女性科学者が止めるという、アメリカ愛国主義万歳って映画だけど、近頃のアメリカ映画にしては珍しく、敵がバカでなく知性がある人間として描けていたのが内容に深みを持たせた。逆に、主人公達が犯罪者に見える、(ヒーローものと愛国心が重なったときにはよくあるケースだが)、意図的に描いたのなら大したものと思う。
 要するにアメリカ的正義に疑問符を打っているのだ。これが新しい映画スタジオの第一弾の作品の中味だよ。野心的だと思わんかね。タイムリーなのか、分からないが、欧米人には、悲劇としてしか描けていないユーゴ内戦について大きな視点と、個人の冒険の視点からメスをいれたという意味じゃ画期的だと思う。テオ・アンゲロプロスの作品の視点と違って大国アメリカの犯罪についても良く言及されていると思う。言っておくがそれは勿論ストーリーテリングの中にエンターテインメントの形としてだよ、お忘れなく。冷戦以降のパワー・ポリテクスについてきちんと踏み込んでいると思う。ピース・メーカーと言う言葉がダブル・ミーニングということに次第に気付く仕掛けになっている。皮肉な意味が分かってくるところでドラマの複雑さが上手く浮き彫りにされていく。しかし、なんでこんな挑戦的な題材を選んだんだろうな。確かに他の映画スタジオじゃ作らないな。ボクはアート系(あるいは岩波ホール系)エンターテインメントとあえて呼びたい。勇気ある題材の選び方に敬意を表したい。
 (角田)


●ヒート
 HEAT 95 マイケル・マン(ビデオ)

 デ・ニーロとアル・パシーノの共演ということだけが救いの映画。他に見るところは何もない。まず長すぎる。2時間以上のアクション映画なんか見たくない。撮影が雑だし、脚本の詰めが甘すぎる。一応、家族を捨て各々の仕事に生きる刑事と強盗団の戦いを家族愛をサンドイッチにして仕上げた分かりやすい構造だが、くどく台詞で片をつけるのと男が黙って去っていくのを、女が見守るといういささか古典的な人物配置がノワールの伝統を継いているけど、どうも空回りしている。ビシッとこないんだよね。最近の邦画、洋画問わず、格好良く決めたモンがないね。ダラダラの時代なのかね。
 監督が撮ったは良いけど、収拾がつかなくなって、プロデューサーと編集者がズタズタに切ったというイメージがある。編集者が5人ほどいたからね。プロデューサーはマイケル・マン自身と『ブラジル』でテリー・ギリアムと一緒にユニバーサルと戦ったアーノン・チャルミン。ただし近頃は金儲けに奔走してるらしいが……。うーん誰が納得してあんな編集をしたのかね、無駄なカットが多すぎるのだ。映画館でドルビーで見たらまあ騙されても良いかなと言う感じ。企画と掴み(キャスト)は良いけど、結果はねという 典型的90年代ハリウッドアクション大作でした。予算が10分の1だったら面白くなったかもね。あ、でもギャラに消えたから同じことか。
 (角田)


●ヒートアフターダーク
 98 北村龍一(ビデオ)

 ワンアイディアの銃撃アクションなのだが、オープニングはちょっと期待させられる。歩いている二人の男の足元を延々と移動撮影で撮っているのだが最後に、殺した死体が転がっているのが分かるというところまでは、良かったけど。そのあとは、よく人間関係が分からず、山の中の廃屋で銃撃戦をしていて撃ち方や殺し方に芸はなく、両者の側にカメラが均等に行くためにアクションとしても緊張感もカタルシスもない。映画ごっこといったところか。役者が名前があるから一般公開されたって感じ。
(角田)


●漂流街
 00 三池崇史(熊谷マイカル)

 三池side-Bに当たる原作モノの過剰演出作品。誰か止めてくれえ。凡百の日本映画のなかではダントツに面白い三池だが、ちょっとずれているというか、丁寧に撮ってほしいなあ。主演の二人が喋れない、演技が出来ないのは仕方がないけど(ストーリー展開で致命的といえばそうなのだが)、埼玉県のバスジャックで乗れるハズなんだけど、 ダメなのはあの看板のクレーンショットのせいだ。インスタントカレーの大看板だが、いかにもしょぼい。もっと本格的に贋作するか、大塚食品のタイアップ取るとかしないと、作品にかける意気込みの程度が見えちゃうんだよ。観客が乗れないし、作品のクオリティーがぐっと下がるんだよね。あのシーン全体が予算の関係で……というマイナスイメージにしか見えてこないんだ。
 同様なことが渋谷ロケや彼らのたまり場、結婚式のシーンにも言えるたぶん今回はコダックのフィルムを使っているんで、発色が非常に良く出るんだけども、 美術にカネをかけてないし構図を整理し切れてないから、隅っこに赤いものや青いものとか写っているとすごく気になる。寺山修司が「ロケで青いポリバケツがあると全部どける」と言っていたが、まさにそういう注意がなされていないと感じた。カメラマンの責任だけどさ。その意味じゃ、北野武とやっている柳島カメラマンは鍛えられていると思う。音響もドルビーSRを使い切れてないと感じる。ミキシングも普段と変わってないようだが、非常に大袈裟、大雑把に聴こえる。
 無垢な盲目の美少女というのもねえ、いつの時代の話だと突っ込みたくなる。シナリオはもちろん全然ダメだけど。及川ミッチーも間抜けすぎるわい。渋谷に闘鶏場があって、その地下に中国マフィアがいる。なんてどうも空間が繋がってないんだよね。吉川晃司の
怪演があったから持ったようなもので、羅列のストーリーは全く頂けませんわ。カポエラの戦いも迫力ないし、沖縄に一度行って戻るなんて、ご都合だよね。ラストの海のブルーだけがコダックの良さが出てました。
(角田)