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フィクション

レディー・ジョーカー(上)(下)
高村薫:毎日新聞社:各\1,700
 ようやく読みました。高村薫は文章がしっかりしているので、最後まで飽きず読める。もちろん「グリコ森永事件」を下敷きにした話であるのだが、実際の事件もこのような展開をしていたのではないかと想像させられる。ただ、主人公の刑事が格好良すぎて興ざめ部分もある。読み物としてはお薦め。
 高村薫の小説の男たちって、ヤオイ調っつうか、妄想系が入っていてそれが、人物造形の最後の詰めですごく甘くなるというか、逆に言えば読みやすいものになると思う。男性作家が書いたとしたら、もっと凄惨な描写やストーリーの持って行き方になるだろう。その点で宮部みゆきなどと同じ大衆作家(死語か?)の部類に入るだろう。



ライン
村上龍:幻冬舎:\1,500
この短編連作集は、ライン、あるいは電波でつながれた若い都会の日本人の外と内の二面性、その切り替えを電波による指令または通信が来て、暴力という表現に駆られていく姿を描く。リサーチとハッタリ好きな作者だから、それぞれの話にへーえという不思議な登場人物を配置しているが、表面上の情報であって、感情がようわからん。
 村上龍の近作は(いや全部か)人物設定と受けるネタに振り回されるあまりに、(まあ褒めてもらいたいってことだろうか=売れたい)読者を情報の目新しさ、人物の奇異さに頼りすぎて物語がどこまでも収束しない。筆力があるのでそうは見えないが、実はほとんどが破綻していると言って良いだろう。


悪党パーカー/ターゲット
リチャード・スターク:早川文庫:\660
 ちょっとパターンに陥っている。それも良くなかった頃のパターンだ。シリーズ中断の前までは『殺人遊園地』、『殺戮の月』という壮絶な話まで行ったのに、『裏切りのコイン』の頃の単調なストーリー展開に戻ってしまっている。困ったものだ。パーカーが強すぎ敵が弱すぎ。


最高の悪運
ドナルド・E・ウエストレイク:早川文庫:¥840
 いつもついてない泥棒がつきまくったら、とシリーズものの裏を書く読者にとっては喝采したくなる出来。読みふける快楽に久々に浸れた。細かくは書かない。読んだ者だけの悦びとしておこう。


フューチャーマチック
ウイリアム・ギブスン:角川書店:¥1,500
 ギブソンの新三部作の最終話は、近未来の新宿地下道の段ボールハウスの中からはじまる。そこに横たわった死にかけているアメリカ人はゴーグルをかけサイバー空間をさまよっている。
 そこに「ヴァーチャル・ライト」「あいどる」の登場人物が絡まり、大地震で壊れたサンフランシスコ・ベイブリッジへとストーリーは飛んでいく。初期三部作のようなわかりにくさガジェットが少ないのでSFな人はつまらないかもしれないけど、軽い物語としては楽しめます。


コンセント
田口ランディ:幻冬舎:\1,500
 何年かに一度はこういう人が出てくる。女性雑誌の隅っこに書いていたのが、いつのまにか口コミでバッと広がっていく。時代の寵児というやつだ。しかし、そのなかで残っている人は少ない。林真理子くらいじゃないか。メールマガジンをはじめた頃は、あ、この作者ちょっと面白いなと思ったけど、すぐにダメになった。小林よしのりと似ているね。勘違いした教祖タイプね
 ようするに書くことが無いのに書いている。だから狭い視野でしか描けないけど、それを「私の等身大の感性で等身大の読者に向けて書いている」とのたまい、「読者が付いて来るんだから私は正しい」と論理の飛躍をもって、あさっての方へ行ってしまう典型的なパターンだ。
 まあ、相手を取り込むのも芸だけどね。渡部直巳ならさしずめ「電通文学」というだろう。
 ちなみに続編は読んどりません。


百器徒然袋 雨
京極夏彦:講談社:¥1,150
 妖怪シリーズのもうひとりの直感探偵。榎木礼一郎の活躍する短編集。スピンオフした登場人物の相変わらずのバカ騒ぎ、事件の不思議さは相変わらず冴えている。京極の残酷な美しさの世界はますます冴えている。


バゴンボの嗅ぎタバコ入れ
カート・ヴォネガット:早川書房:¥2,400
 久々の作品!と思ったら長編が出る前に書き散らした短編を集めた作品集。かなり手を入れているということだ。ここにはSF色は薄く、悲観的な見方がずっと増している。SFという枠が無いとどのジャンルにも入らない作品だったんだろうな。難しくはないけど、読みづらい本です。


スパイの誇り
ギャビン・ライアル:早川書房:¥2,300
 ライアルって、なんで評価低いんだろう。私は内藤陳がすべて悪いと思っている。あと日本人のまじめな性格。冒険小説がこういうモノだと勝手に作り上げてしまったからだ。初期の作品があまりに神格化されているので、後半の作品の軽味というか、ユーモアが理解できないのだろう。「マクシム大佐シリーズ」はダーティー・ハリーなんで面白いと思うんだけどなあ。
 さて、本作は、舞台は第一次大戦前の欧州。まだ、優雅さが残る世界で、戦争は正々堂々と言うのが基本の時代。汚らわしいスパイとなった童顔の元貴族の大尉、大尉の兵役時代の部下でアイルランド義勇兵で裏世界に強い部下。そしてひょんなことからふたりとかかわり合いを持つようになった、アメリカの大富豪の娘。この三人が他国スパイと戦う。古式床しい浪漫だ。
 藤田某が、何百頁も費やして冒険小説とやらを書くのと対照に、簡潔にまたミステリーの謎解きもトリックも良くできていて二度も三度も楽しめる会心作。表紙の絵が良くないな。ちょっと買う気になりにくいのが難。