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映画本

タランティーノ・バイ・タランティーノ
ジェイミー・バーナード:ロッキング・オン:\1,800
 決定版「成り上がり」もの、タラちゃんの評伝。と言っても恰好良さ、アメリカン・ドリームとは全く距離を置いた貧乏人の這いあがりかたを描いている。タランティーノは、悪趣味ではないし、美的センスもある。ただし、育ちの問題で結局はマクドナルドのビッグ・マックが一番うまいものだと身体が反応してしまうところがあるのだろう。ここ数年の彼の沈黙はその過去を消していく作業になると私は睨んでいる。
 数点のモノクロ写真を見ると、彼が映画を学んだと言う伝説のレンタルビデオ店「ビデオ・アーカイブ」は、郊外のショッピング・モールの片隅にあった狭い店舗で店の経営もルーズで、バイトの彼らがレジの金を借りたり、勝手に仕入れを決めたりしていたらしい。どいつも典型的なオタク層で、店番しながらポテト・チップ食ったりして、デートの時の金にも事欠くようだったという。
 おもしろいのはタランティーノの目指す地点で、ハリウッドじゃなくて、ビデオレンタルされるようなB級アクション、テレビ東京で放送されるような映画を監督したいというのを目標にして、そのためのシナリオ書いたりエージェントを探したりしていたところだ。何がなんでもハリウッドじゃないところがその前の世代と違ってビデオ世代なんだと思う。
 結局のところまわりから後押しされて『レザボア・ドッグ』を監督したように書いているけど、真相はどうなのだろうか?ただ読みとれることは、彼が有名になってからも、まわりのかつての友人たちは、相変わらずビデオを見て暮らしていたりする、そのギャップの部分だ。未だにタイプが打てず、誤字も多く、ノートに殴り書きをしてシナリオを書いている男は次の映画をいつ撮るのだろうか。ロバート・ロドリゲスの『ハリウッド頂上作戦』と併せて読むことをお薦めします。



ジョージ・ルーカス
ジョン・バクスター:ソニーマガジンズ:\2,600
 1998年、映画100年記念でカイエ・デュ・シネマの「20世紀のシネマ」というようなタイトルの20世紀の一年一年を振り返る、ムックがあって、スターウォーズの年の項に、Tスターウォーズが誕生して、ルーカスが消滅するUとあった。きわめて象徴的な言葉だなあと思った。ジョージ・ルーカスほどわかりにくい映画人もいないだろう。よく口も利かないシャイな監督と言われ、その反面辣腕プロデューサーとも知られる。大学時代からアート映画、ドキュメンタリーに傾倒していてカメラマン、コンラッド・ホールのもとで働いたり、観念SF映画『THX1138』を作っていた。ワーナーでリメイク版『THX1138』を作って首脳部の怒りを買った時、擁護したのはフランシス・コッポラだった。しかし、コッポラのスタジオ、ゾエトロープが倒産しそうなとき、ルーカスは救いの手を差し伸べなかった。代わりに製作工房、スカイウォーカーランチ、ILMを設立していった。
 『スター・ウォーズ』のヒットがいかに偶然の産物であったかは、一作目が成功してからルーカスは神話世界の書物を読みだし、サーガとしての世界観を打ち出す。『レーダース』の成功以降、スタジオから高額なプロデュース料を引き出すことが出来、次第に自分の王国を築くことに熱中し出す。そのあたりの批判する者たちの切り捨て方はすごい。ほぼ、唯一の理解者だった妻で編集者のマーシャも触れることがタブーとなっているくらいで過去からの変節を言う者は近づけない。完璧な映画と他人のコントロール、そして自分の静けさの確保。そんな孤独な首領となった男の姿が読みとれる。


映画が幸福だった頃 田中徳三映画術
田中徳三:JDC:¥1,800
 いま結構気になっている映画会社がいまは名前はあるが残ってない「大映」。あまりに渋い会社は職人的な映画を残してる。そしてどこか監督のタッチを残している。「座頭市」、「眠り狂四郎」と勝新太郎、市川雷造のTカツライスUと呼ばれた定食=「プログラム・ピクチャー」を撮ってきた、広池一夫、森一生、三隅研次、そして田中徳三。彼の自伝と作品録で構成された大映史。田中徳三の演出自身はあまり面白くないけど同期の監督の助監督から監督へと移り変わる時期。当時の大映京都の模様がおおらかに描かれている。

EYES WIDE OPEN スタンリー・キューブリックと「アイズ ワイド シャット」
フレデリック・ラファエル:徳間書店:¥1,800
 『アイズ・ワイド・シャット』はとんだくわせものの映画だったが、どうしてそうなったかがこの本を読むと少し分かってくる。キューブリックほど映画の脚色に命を懸け、原作者を怒らせた映画監督はいないだろう。そのことは脚本家との間でも同じ様だ。
 作者は、小説や戯曲も書くイギリスの作家で、ヨーロッパ教養人なので古典に対する知識も多い。また別に映画のために書かないといけない立場でもないのでキューブリックと対等な位置に立てる。
 キューブリックは作者にいきなり、原作を読ませ感想を聞く。作者は一度で原作者名を当て、改定案を出す。ここからキューブリックとの作業が始まる。しかし、お互いが会ったのは二度だけ最初と最後だけ。しかも会話はキューブリック家のキッチンで。その間は、連日のようにキューブリックが電話を掛けてきてあれこれ意見を言う。そのあたりに自らを神格化しようとするキューブリックの姿が見える。結局、キューブリックも謎の人物で脚本も謎な形のままこの作業は終わる。



ティム・バートン
柳下 毅一郎 編:キネマ旬報社:\1,600
 このキネマ旬報のフィルム・メーカー・シリーズはいつも書いている人の選択がいつも謎だ。リンチの滝本誠とウーの宇田川幸洋とこの柳下くらいは納得行くのだけどね。まあ前のシリーズと同様、このシリーズの賞味期限は各監督の新作が出るまでということだよね。
 最大の欠点は監督本人のインタビューがないこと。だから結局は「群盲象を撫でる」なものになっちゃうんだよね。ホント。まあ予算と時間が無いという柳下氏の日記記述を信じるなら、地方の高校生をだますようなこんなシリーズ止めたほうがいい>キネマ旬報。


日本のみなさんさようなら
リリー・フランキー:情報センター出版局:\1,400
 かつて「ぴあ」が月刊で、本社がお茶の水、猿楽町の崖の下の陽のささない古いビルの二階にあったなんて知っている人はもう少ないかもしれない。それはもう20年も前の話なので、そのころは、街にも名画座とかオールナイトとか普通にやっていて映画青少年は、「ぴあ」を片手に飛び回っていた。その頃の「ぴあ」は、にっかつロマンポルノ、ピンク映画、自主映画などきちんと載せていた。そういえば、「ぴあテン」「もあテン」を憶えている人はいるかな。この本はそんな頃を知っているリリー・フランキーが日本映画について書いたコラムの単行本だ。わかるひとにはわかる。


デイビッド・リンチ
クリス・ロドリー編:フィルムアート社:\2,600
 趣味が「猫の解体及びその組み立て」とのたまう変態映画監督だけど、リンチって私には未だもって良く分からない。結構、熱狂的な影響を受けた映画の作り手としてあげる人が多いけど、そんなに刺激の強い作品を作っているという意識は無いなあ。
 リンチのある種即物的な刺激部分の衝撃よりも、根底にある、保守さ加減(あるいは強迫観念「ボタンダウンのシャツの第一ボタンを締めること」)が、透けて見えるところが違和感を感じる部分なのだろうか。だから、現代の映画作家であっても、本当の作家かどうかは分からない。分かりやすく言えば現代アートの作家に対する違和感という私の意見と言うことだろうか。
 本書は、リンチに徹底したインタビューをしているので、彼の作品以外の映画産業との葛藤(「砂の惑星」から「ブルー・ベルベット」に至るディノ・デ・ラウレンティスとの関係)など素顔の部分が覗けて興味深い。


日本映画史100年 
四方田犬彦:集英社新書:¥720
 近頃、ヨモタ先生は、金井美恵子の「目白シリーズ(?)」に出てくる某私立大学英文学助教授のナカノくんにますます似てきた。学者がこんな新書に手を出しちゃおしまいだよ。内容が粗い粗い。そりゃ、浜野保樹に比べりゃましだけど、こんなの読んで、授業受けてる学生諸君がいたらそれは悲惨だ。
 たかだか100年の歴史をこんなに歪曲しちゃいかんじゃないの。普通の学生に読ませるモンじゃない、トンデモ映画本じゃないの。私論とつけるべきじゃないのか。


日本映画のラディカルな意志 
四方田犬彦:岩波書店:¥3,000
 彼の師匠は総長でアガリとなった。それが出来ない私学の教授はどうするのか?答えがこの本に隠されている。1.岩波書店、2.分厚く、殴られたら怪我するほど堅い表紙の単行本、3.表紙がマンガ(丸尾末広)、4.テーマが90年代の日本映画。
 わかりやすいよね、いわゆる岩波文化人コースだ!しかも、ちょっと未だに若手ってイメージで、海外に対しては日本代表の学者として売る。ニューアカの時代じゃないんだからさ。時代錯誤じゃないの。
 まあ次々へと悪口は出てくるけど、最大の欠点は、日本映画の監督について書いているのだが、ひとりの監督のインタビューも無い(従って資料的価値も無い)。
 お前は何人じゃあ!!と言いたくなるほど悲しい。「電影風雲録」に比べてのこの落差はなんだ。この高飛車なものの言い方は。
 かつて、彼は学芸大にもぐりの聴講生として、小泉文夫氏の授業で聞いた言葉を書いている。「民族音楽を研究するために必要なことは、音楽の知識ではなく、まず馬に乗ることを憶えることだ」その言葉をまんま著者に返したい。フィールド・ワークしろよな。所詮は日本人なんだからさ。


テリー・ギリアム 
イアン・クリスティ編:フィルムアート社:¥2,600
 ゴシック調の華麗な美術と風刺が利いた内容が交錯する大監督と思われがちだが、実は予算を守る手堅い職人監督であることが良く分かる。「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」「バンデットQ」、「未来世紀ブラジル」、「フィッシャー・キング」は、低予算で、いかにイマジネーションを膨らましてミニチュアや、スタジオ合成で幻想的な世界を作ったかが分かる。
 ギリアムにとっての悲劇は、プロデューサにも魔法をかけてしまい、バカプロデューサーが自分でそれを作り上げたかのように錯覚してしまい、作品を滅茶苦茶にされそうになってしまうことだ。
 フィルモグラフィーをみればすぐに分かる。「ホーリー・グレイル」の後の「ライフ・オブ・ブライアン」のアフリカロケ、「バトル・オブ・ブラジル」は有名な話だけど、それも始まりは「人生狂想曲」の「クリムゾン終身雇用会社」からでもあった。「バロン」の巨額ロケは語り草だし、それらはみんなギリアムのわがままという風説が行き交っている。しかしこの本のギリアムの発言からは、まったく別な話が聞かれる。いかに低予算で、自分の世界を守るか。そんな映画を作りたい人に薦めます。


映画は語る 
淀川長治・山田宏一:中央公論社:¥2,300
 長い本であるけど、二人の関係を示すには、あとがきに書かれた山田氏が淀川氏とのはじめての対談の場の描写で充分だろう。緊張していた山田氏の前に現れた淀川氏は、食事をしながらの対談中、山田氏の残したごはんを見ると「あんたこれ食べないの」と言い、山田氏がうなずくと、ごはんに塩をかけて、皿から手で食べた。これだけで充分でしょう。
山田氏の得意の聞き書きで淀川氏の映画との出会い、ハリウッド行、日本映画、好きな女優まで縦横無尽に語り尽くされている。昔のTBSラジオでの「淀川長治映画劇場」の口調を思い出した。


映画狂人日記
蓮実重彦:河出書房新社:¥2,000
映画狂人、神出鬼没
蓮実重彦:河出書房新社:¥2,000
 国際的映画総会屋である彼の90年代の総長賭博は成功し、ついでに北野武バブル転がしも成功し、外国映画界にも片足残している。このいやらしいヌエの様なやり方は、昔から変わってないけどね(物事を相対化してしまう、評論家のやり口)。
 表紙の装丁は、次は黒沢清プロモートの宣言か
 ところで、東大総長室には、巨大ビデオプロジェクターがあるらしいんだけど、ホントか?素晴らしき日本教育界。
 というところで学長退任の報が入ってきた。頼むから映画界にしゃしゃり出てこないで欲しい。(言わなくても出てくるだろうけど、きっと外人相手に仕事すんだろうな)


すべてはブラッドシンプルから始まった
ロナルド・バーガン:アーティストハウス:¥2,000
 まず最初に最終章にある、本書に対する映画学科教授の反論から読んで欲しい。これに大笑い出来る人は、本書を読むことが出来る。コーエン兄弟。ディレクターズ・カットで、初公開バージョンよりも短い映画を作る作家。アカデミー賞授賞式前日に死んだ彼らの編集マン。徹底的にストーリーボード通りに映画をつくることを是とする。謎が謎を呼ぶオタク映画作家。
 彼らがいなければ、タランティーノも、スパイク・ジョーンズもウォシャオスキー兄弟もいなかったと言えるだろう。作家的エンターテインメントがいかにして作られたかが分かる(ただ、本人たちはそんなこと知ったことじゃないと言うだろうけどね)。


シネマで夢見てたいねん
芦屋小雁:晶文社:¥2,800
 日本屈指のホラー映画のコレクションを持っていた作者。彼の体験的ホラー映画の歴史を語った好書。B級映画の入門書にも最適。
 僕の気に入ったのがこの作品。
 ホラー・エクスプレス(未)72年 
 全編汽車の中クリストファー・リー、ピーター・カッシング満州で発見された氷づけのミイラをシベリア鉄道で運ぶミイラが起きあがり乗客を襲う。やっつけたと思っても別人に乗り移る。超古代に来た宇宙人らしい。そこに女スパイが絡む。はたして全員がゾンビかするのか イギリススペイン合作
 どうです、観たくないですか?


くたばれ!ハリウッド
ロバーロ・エヴァンス:文芸春秋:¥2,857
 『ある愛の詩』、『ゴッド・ファーザー』、『チャイナタウン』、『コットン・クラブ』を製作してきたプロデューサーの自伝。ものすごく痛快。ここまで書いて良いのかというくらいハリウッドの裏事情を描き出している。
 売れない二枚目俳優としてハリウッドに来て、初主演でアーヴィン・タルバーグを演じて緊張のあまり、NGばかり出していたとき、共演のジェームズ・キャグニーが、ウインクして目の前で『ヤンキー・ドゥードゥール・ダンディー』のステップを踏んでくれた話。またヘミングウエイの映画化で闘牛士の役をしているときには、エヴァ・ガードナーやアルバート・フィニーに嫌われ、エロール・フリンとは売春宿に入り浸っていた話。プロデューサー、ダリル・ザナックが来て現場をじろりと見て、「こいつは降ろさない。KID STAYS ON THE STAGE」と言って帰っていった話。
 プロデューサーに転向したときにはパラマウントで全権を委譲されたけど、そのころは、倒産寸前で親会社は撮影所を閉鎖して売り出そうとしていた。
 何本かのヒット作で盛り返したが、妻のアリ・マグローに逃げられたり、「ゴッド・ファーザー」でアル・パチーノに出演させるとき、闇の世界の弁護士を使ったり、麻薬キャンペーンで捕まったとき、反麻薬番組を作ったり、「コットンクラブ」の製作では殺人事件に巻き込まれたり、キッシンジャーとの交遊。
 何しろ波瀾万丈で飽きさせない。ジャック・ニコルソンを「アイリッシュ野郎」と呼びながらもお互いに良き友達で、スキャンダラスまみれの著者をニコルソンは一緒にアカデミー賞授賞式につれていった。金の心配だけしている最近のプロデューサーとひと味もふた味も違います


人間の証
金正日:角川書店:¥2,000
 T金ちゃんのどこまでやるのUのおっさんだけど、朝鮮総連側から見た翻訳なので信用できないけど、噂の金正日による、「映画理論書」
 内容は別に読むほどの内容はない。しごく当たり前でかつ抽象的だ。だから、これを読まされた北朝鮮の映画人は苦労しただろうなあ。


ここまで知れば面白いアメリカンTVドラマ120%ガイド
岩井田雅行:求龍堂:¥1,600
アメリカのテレビ番組には、最終回が無い。視聴率が悪いとすぐ打ち切りになる。契約の問題で役者が降りると話の展開がおかしくなる。夏休みシーズンの半年は休む。「ツイン・ピークス」、「Xファイル」はヒットしなかった。アメリカで受ける番組は日本では受けない。などなど、BS、CS、ビデオで多くが見られるいま、その裏側を知るには恰好の一冊。


おかしな男 渥美清
小林信彦:新潮社:\1800
 芸人評伝シリーズ。前半のリアルタイムでの渥美、小林の交流はいいけど、後半はつきあいが無く伝聞でしかないから迫力に欠ける。自分の知っている部分しか書かないのなら、後半は入らないのに。横山やすしのときもそう感じた。
 興味深いのは、フランキー堺が川島雄三死後、浮きまくって方向性を見失って写楽の映画化に固執して死んでいった部分だ(写楽は川島がフランキー主役で撮るはずだった)。車寅次郎を演じきった渥美とは対照的だ。